訴訟②:共同不法行為
さて、次はどんな判決ですか?
共同不法行為が成立するかどうかが争点になったわ。
民法も関係してくるからね。
訴訟の内容
判決日 | 平成29年2月16日 |
事件番号 | 平成28年(ワ)第2720号 |
担当部 | 東京地判(47部) |
発明の名称 | 生海苔異物分離除去装置における生海苔の共回り防止装置 |
キーワード | 共同不法行為 会社法 |
事案の概要 | 被告ニチモウとその子会社である被告ワンマンによる共同不法行為の成立や、その代表取締役である被告Aによる会社法429条(取締役の第三者に対する責任)の成立が問題になった。 |
特許は、実は以前見たものと同じなの。
特許の内容
本当だ。
つくづく熾烈な争いをしている業界なんだなぁ…
争点:共同不法行為の成立性
さて、製品を販売していた被告ワンマンは被告ニチモウの子会社なの。そこで原告としては、取りっぱぐれの無いように共同不法行為だと主張したの。
被告ニチモウは被告ワンマンを実質的に支配し,自らの一事業部門として事業を遂行している…だから共同不法行為に該当するじゃない…!?
という主張ね。
ふーん、それなりに説得力がありそうですけど…
そうね、でも裁判所は、あくまでも別会社である以上、そうそう認められないと述べたわ。
被告ワンマンが被告ニチモウの完全子会社であるなどの原告の主張する上記事情を踏まえても,被告ワンマンとは別の法人である被告ニチモウについて,被告ワンマンとの共同不法行為が成立するとは認めるに足りず,原告の上記主張を採用することはできない。
すみません、共同不法行為ってどうすれば成立するのか?って所から分からないんですが…
じゃあ、まず民法719条(共同不法行為)と、その前提となる709条(損害賠償)を見てみましょうか。
第709条
故意又は過失によって他人の権利又は法律上保護される利益を侵害した者は、これによって生じた損害を賠償する責任を負う。第719条
数人が共同の不法行為によって他人に損害を加えたときは、各自が連帯してその損害を賠償する責任を負う…(後略)
709条は損害賠償についての条文ですね。これは特許侵害訴訟でもよく出てきます!
そうね。そして719条では「各自が連帯してその損害を賠償する」となっているわ。つまり、賠償金をより確実に取ることができるわけ。
クリエ先生、お金を取る話になるといい笑顔になるなぁ。それで今回は、なぜ共同不法行為が認められなかったんですか?
共同不法行為が認められるためには、それぞれの被告の行為に関連共同性が認められることが必要とされるの。特に、客観的に見て不法行為が共同で行われたことが必要とされるわ。
親会社と子会社の関係とは言っても、それだけでは認められるには不十分で、あくまでも特許侵害品の製造や販売を共同で行ったことを証明しないといけないわけ。
争点:取締役の責任
では、会社法の件は何が問題になったのですか?
会社法429条は、役員による損害賠償責任について規定しているの。
第429条
会社法より
役員等がその職務を行うについて悪意又は重大な過失があったときは、当該役員等は、これによって第三者に生じた損害を賠償する責任を負う。…(後略)
原告が問題にしたのは、原告と被告ワンマンが和解交渉中だったのにもかかわらず、代表取締役だった被告Aが侵害品の販売を行ったことね。
特に、訴訟で侵害論の心証が開示された後にも販売を続けていたことにメチャ怒ってるわ。
う~ん、、怒るのも仕方ないような…?
結局一部侵害だったわけですし。
気持ちは分からなくもないけど、やっぱり要件を満たしているかどうかを判断しなくちゃね。判決では冷静に原告の主張を切り捨てているわ。
…和解交渉中であったことをもって,本件装置に係る被告Aの悪意又は重過失を裏付ける事情ということはできない…,他に,本件販売1及び3に係る被告Aの職務の執行について,同被告に悪意又は重過失があったことを認めるに足りる証拠はない。
なるほど。
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