クレームの考え方
前回クリエ先生に教えて貰ってクレームが大事だってことは分かったけど、クレームの書き方一つで特許侵害かどうかが変わってしまうなんて大変だなあ…
ぱてん太くん、クレームの重要さを理解してくれたのね。
あ、クリエ先生。
まさに、クレームって特許の心臓部分なんですね。
それにしても、モノを言葉だけで説明するのはなかなか難しそうですね。
そうなのよ。
それが分かってない人が多くて困っちゃうんだけどね…
転がる鉛筆・転がらない鉛筆
そうね、例えば「軸の断面が丸い鉛筆」しか存在しない世界を想像してみて。そんな世界で鉛筆を机に置くと、どうなると思う?
クリエ先生、僕が成長したかを試していますね?
もちろん、机の上をコロコロ転がって、端から落ちちゃいますよ。
正解よ。やるわねぱてん太くん。
じゃあ、机に置いても鉛筆が転がらないようにするには、どんな工夫をすればいい?
そりゃあ、軸の断面を六角形にするんです。
そうすればもう転がりません!
クレームを作ってみよう
さすが私の教え子ね。
では、ここでもう一つ問題よ。
その工夫をクレームにしたらどうなるかしら。
クリエ先生、今日はいつになく優しいですね。やっと僕の良いところを分かってくれたのかな!?
それではクレームを書いてみますね。
細長い形の芯と、 |
前記芯の周りを囲むような、断面が六角形の軸と、 |
を有する鉛筆。 |
どうですか先生、カンペキでしょ?
…流石ぱてん太くん。期待通りの反応ね。
(あ…何か違ったか…)
権利範囲に入る?入らない?
じゃあ例えば、断面が四角形の鉛筆を考えてみてくれる?
ぱてん太くんの作ったクレームは、今の鉛筆をカバーできているかしら?
ぱてん太クレーム(1) | 製品を言葉で表現したら… |
細長い形の芯と、 | 細長い形の芯と、 |
前記芯の周りを囲むような、断面が六角形の軸と、 | 前記芯の周りを囲むような、断面が四角形の軸と、 |
を有する鉛筆。 | を有する鉛筆。 |
僕のクレームでは、軸の断面が四角形の鉛筆はカバーできていませんね。。。
そういうこと。
じゃあ、もう1回やり直しよ。
はい、口を動かすより手を動かす!!
そのフレーズ、クリエ先生にスパルタ教育を受けていた受験生の頃は授業のたびに聞いていましたね。懐かしいのに動悸がするのはなぜだろう…
気を取り直して、えい、こんな感じでどうでしょう?
細長い形の芯と、 |
前記芯の周りを囲むような、断面が多角形の軸と、 |
を有する鉛筆。 |
切り替えが早いのがぱてん太くんの良いところよ。
確かにこれなら、断面が四角形になっても大丈夫ね。
どこまで書くか?広げるか?
じゃあ次は、これを見て。
ぱてん太くんのクレームと比べると…。
ぱてん太クレーム(1) | 製品を言葉で表現したら… |
細長い形の芯と、 | 細長い形の芯と、 |
前記芯の周りを囲むような、断面が多角形の軸と、 | 前記芯の周りを囲むような、断面に平面部分がある形の軸と、 |
を有する鉛筆。 | を有する鉛筆。 |
こうして比べると、断面が多角形ではない場合は侵害にはならないんですね。
そういうこと。
クレームは、言葉の選び方ひとつで、権利の広さに天と地の違いが出てくるの。
自分の発明をしっかり守るために、言葉の力を磨くことね。
権利範囲は広ければ良いの?
クレームが広いと先行技術も多い
とにかくクレームの言葉を広くすれば、色んな製品を権利範囲に含めることができるんですね。つまり、攻撃力の強い特許ってことですよね。
確かに広いクレームを書けば、攻撃力は強くなるわ。
でもね、広くすれば良いってものでもないのよ。
例えば、さっき作ってくれたクレームを見てみましょう。
細長い形の芯と、 |
前記芯の周りを囲むような、断面が多角形の軸と、 |
を有する鉛筆。 |
ここで、ぱてん太くんが特許庁に特許を出す前から、こんな鉛筆が知られていたと考えてみて。
あ~、こんな断面の鉛筆も、「前記芯の周りを囲むような、断面が多角形の軸」ですね。
そう。
そして、ぱてん太くんが特許庁に特許を出願する前にこんな「前記芯の周りを囲むような、断面が多角形の軸」が世に知られていた場合、ぱてん太くんの出願は拒絶されてしまうの。
結論:広く書けばいいってもんじゃない
だからクレームを書くときには、次のことを考えると良いわね。
- すでに世に知られている先行技術によって拒絶されないラインを見極める
- どれ位の広さの権利が必要か、自分の実施する内容をもとによく考える
分かりました。
先行技術や自分の発明をもう一度見て、よく考えてみます!
コメント
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