マーカッシュ形式の使いかた
化学分野にも、それ以外にも。
クレームの書き方にも色々あることを教えてもらったけど、マーカッシュ形式は化学分野でよく使われるんですね。
そうね。化学分野以外でも、複数の材料から選択的に記載する場合に使われることもあるから、覚えておいて損はないわ。
例えば下の特許では、電極の材料が複数の金属のどれでもOKな場合に、マーカッシュクレームを使っているわね。
【請求項1】
…弾性表面波装置において、前記IDT電極が、Au、Ta、W、Pt、Cu、Ni及びMoからなる群から選択された少なくとも1種の金属を主体とする金属材料からなり…
特許第4811517号の請求項1
広けりゃ良いってワケでもない
でも…
「選択肢がある」ってことは、良いことばかりじゃないのよ。
不用意に使うとマイナスになることもあるわ。
仮に、上の例で、出願時には「Cuを使った電極」だけは公知で、それ以外の材料を使った電極は知られていなかっとするわね。
その場合、Cu電極を公知例として、この特許出願は拒絶理由を出されてしまうの。
そうか…
たくさん書いた選択肢のうち、どれか一つだけを理由にして拒絶されちゃうんですね。
もちろん、拒絶された後で補正することもできるけどね。
何でもかんでも選択肢に入れてクレームを広くすればいいワケじゃないってこと。
それで「マーカッシュ」って何?
英語だと「Markush Claim」
ところで「マーカッシュ」って何のことですか?
響きが「パーカッション」みたいな威勢が良さそうですけど。
…「マーカッシュ」っていう言葉は、書き方と一緒にアメリカから輸入されたものなの。
A “Markush” claim recites a list of alternatively useable members.
「Markush」クレームは、選択的に使用可能なメンバーのリストを記載しています。
https://www.uspto.gov/web/offices/pac/mpep/s2117.html
「ユージーン・マーカッシュ」さん
最初に書いたのは、その名も「ユージーン・マーカッシュ(Eugene Markush)」さんよ。特許になったのは1924年の8月だから、だいたい100年も前の出来事ね。
オリジナルのクレームはこんな感じで、下線を引いたところが「からなる群から選択される」に対応する部分。
1. ハロゲン置換ピラゾロンとのカップリングを含み、①アニリン、②アニリンの同族体、および、③アニリンのハロゲン置換生成物からなる群から選択される、ジアゾ化非スルホン化物質を含む、染料の製造方法。 |
このクレームでは、
①アニリン
②アニリンの同族体
③アニリンのハロゲン置換生成物
のどれか一つが選択されているわ。
マーカッシュクレームに歴史あり、ですね!
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